香港警察は27日夜、休刊に追い込まれた香港紙、蘋果日報(アップルデイリー)の主筆で英語版編集長だった馮偉光氏を香港国家安全維持法(国安法)違反の疑いで新たに逮捕した。中国が国安法を施行してから30日で1年となるのを前に、香港での言論弾圧に歯止めがかからない。27日には、蘋果日報とともに民主派寄りの論調で知られるインターネットメディア「立場新聞」が論評記事の大部分を削除した。
馮氏は、香港の空港で英国に向かう飛行機に搭乗しようとしたところ、警察に連行された。今月に入って逮捕された蘋果日報の元職を含む幹部は7人目。馮氏には「外国勢力と結託し、国家の安全を危険にさらした」との容疑がかけられており、「欧米による中国・香港への制裁」に賛同した記事が問題視されたとみられる。
警察当局者は「(蘋果日報への)捜査は続いており、逮捕者がさらに増える可能性がある」と地元メディアに話した。
蘋果日報をめぐっては昨年、創業者の黎智英(ジミー・ライ)氏が国安法違反や詐欺罪で逮捕・起訴された。今月に入ってからは、編集局長ら6人が相次いで逮捕され、同社の銀行口座も凍結された。蘋果日報は資金繰りの急速な悪化などから24日付を最後に休刊を余儀なくされた。
こうした情勢を受け、立場新聞は27日夜に緊急幹部会議を開き、5月以前に掲載したすべての論評や解説記事、読者投稿をいったん削除することを発表した。当局によって国安法違反と判断される可能性があるためだという。今後、各記事の筆者と協議し、再掲載するかどうかを判断するとしている。
立場新聞はまた、運営会社の役員8人のうち6人が辞任したことも明らかにした。民主化を支持する著名な歌手、何韻詩(デニス・ホー)氏も含まれている。香港のメディア関係者は「立場新聞はこれからもニュースを配信し続けるとしており、いつ蘋果日報のように当局につぶされるかわからない。経営陣が一網打尽にされるのを避けるため、(辞任で)リスク分散を図ったのではないか」と分析する。
「真実を伝えるジャーナリストとメディアが次々と消えていく。香港は、これから暗黒の時代に入る」。台湾在住の元香港紙記者は国安法施行1年を前にこう語った。
原文出處 產經新聞
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